もう少し前になるが、マツダの新しい技術を体感できる試乗会があった。
かつて美祢サーキットであった場所が今はマツダの美祢自動車試験場となり、
そこでエンジンとシャーシーの新しい技術が組み込まれたクルマを試乗した。
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エンジンはSKYACTIV-Xと呼ばれる圧縮着火エンジンである。

ディーゼルエンジンでは普通に使われている圧縮着火をガソリンエンジンで達成したのがこのSKYACTIV-Xだ。
その理論はとにかく難しくなかなか理解できない。
燃費向上のためにうーんと薄くした混合気にしたいが、
それだと火花点火ですべて燃え切らないらしい。
そこで高圧縮して高温・高圧にすれば点火できないか?
というところにたどり着いた、とのこと。
でもディーゼルエンジンのように圧縮で高温にしてもエンジンは回らないらしい。
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ここで文系の頭のオイラはどうしても理解できなかったのだ。
なぜなら世の中の定理はオイラが思っているのと逆だったから。
疑問は「なんであんなに火が付きづらい軽油が圧縮すると爆発して、あんなに火が付きやすいガソリンに火がつかないか?」である。
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しかし真理はこうであった。
引火点と発火点という二つの火が付く温度の違いだ。
これがごっちゃになっていた。
というより知らなかったもんな。
ガソリンはマイナス43度から火を近づけると引火。軽油は40-70度で引火。
そして
自然に発火する温度はガソリンが300度に対して軽油は250度と低いのだ。
へーっ!!
だからガソリンを圧縮発火させるにはディーゼルエンジン以上に高圧縮で温度を上げなければいけない。
そうするとものすごく丈夫で高剛性なシリンダーででかくて重くなってしまうらしい。
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というわけで、なんとなくガソリンエンジンの圧縮点火は大変で
さらにリーンバーン状態ではプラグ点火でも完全燃焼させるのも大変なことだけはわかった。
で、マツダが考えたのが今まで通りスパークプラグを使い、燃焼の引き金を引いて、
あとは圧縮で温度が上がっていればきれいに燃える、という技術にたどり着いた。
簡単に書いたが、その状況コントロールも気温や湿度にも影響されやすくかなり高度で難しい。
ちなみにスーパーチャージャーが装着されていているがメインの用途はうんと空気を薄くするため、空気を押し込むために採用されている。
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走ってみての感想は、今までのエンジンよりレスポンスがよく、静かな感じ。
本来はディーゼルエンジンのようなカラカラ音が出ているらしいが、
その防音対策をだいぶやったのでとても静かになっている。
低回転域で負荷をかけるとややノッキング音が聞こえるがここが一番、燃費がいい領域らしい。
ターボエンジンのラリーカーで、さんざんノック音がしたらエンジンが壊れるぞ!
いわれていた身とすればやや気持ち悪い感はある。
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このエンジンで一番すごいと思ったのは
1000-4500回転の領域ならどこでも燃費が大きく変わらない、ということだろう。
アクセル、ジワーっで燃費走行をしなくても燃費がいい。
そこそこ踏んで走って燃費がいいなんて立派だ。
てーことは燃費重視のハイギヤードのつまらんクルマじゃなくて、
クロスレシオで気持ち良くつながるミッションでもそこそこ燃費のいいスポーティーカーが成立するってことだな。
期待!
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新しいシャーシーも採用された。
ものすごい数のステフナーで補強され、
硬さを出しつつ、力を逃がすところには振動エネルギーを減衰させるフランジを採用している。
要はカチカチにしてしまうとどこかに力がかかりすぎてしまうので、
剛性を上げたうえで適度に力を逃がす仕組みがあるということだ。
ラリーカーやレーシングカーは数年しかボディを使わないからカチカチで、
逃げはあまり考えなくていいのかもしれないが、
量産車は数年走って亀裂とか入ったら洒落ないならないからね。
でもちょっとステフナーの数が多すぎるような気がする。
それによって重くはなってないという説明だけどね。
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走りはウエットの状態でちょっとスポーティーに走らせても、
アンダーステアは少ないし、リヤタイヤもすごく粘って安定している。
わざとテールスライドさせるようなアクションをしても、
流れ方は穏やかで収まりも自然でステアリング操作をしやすかった。
もしかするとドライだと全体的に粘りすぎて少しダルなハンドリングと感じてしまうかもしれない、
とも思った。
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やたらと電気自動車がもてはやされているけど、
やっぱり内燃機関の「走ってる感」はいいね。
電気自動車を否定するつもりはないけど、
産油国じゃない中国に踊らされてる感もあるし、
趣味のクルマはまだまだ内燃機関と良いシャーシーがマストだね。
マツダさん、この先も開発、頑張って!!
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