FBでシェアされていた動画にこんなのがあった。
https://www.youtube.com/watch?v=Su7GkqwxG08
朝の情報番組でも紹介されていたから見た人もいるかもしれない。
TV番組も素人動画を持ってくるだけでプログラムを組めるのだから安上がりなものだ、
という話は置いといて、
オイラも以前、カバに追いかけられたことがある。
状況はこの動画とまったく一緒だった。
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時は1991年頃。
場所はケニヤ北部のレイク・バリンゴ。
周辺の山から水が流れ込む馬鹿でかい水たまりのような湖だ。
周辺のレイク・ボゴリア、レイク・ナクルとは水質が違うようで、
ここにはフラミンゴは住んでなく、多くのカバが生息している。
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バリンゴはサファリラリーでは有名な経由地で、
湖に面したロッジはラリー前から大いににぎわう。
当然オイラもその中の一人としてここに宿泊した。
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そしてチェックインの時にこんな注意を受ける。
「夜中、コテージから出てはいけません」
その理由はカバがうろついていて非常に危険だから。
「こうしてみるとのんびりおっとりしているように見えますが、非常に気性が荒く、人を攻撃してきます」
と言いながら遠くの湖面を指さす。
そこには鼻と目だけを水面から出したカバが無数にプカプカしている様子が見える。
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アフリカではライオンよりカバに襲われて死ぬ人のほうが多い。
夜は陸上で食事をしていていきなり出くわすと、
超短気なうえに臆病なので体当たりをかますのだそうだ。
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ロッジの敷地内の芝生も夕方からカバの食事場所になるので、
日が暮れてから敷地内の移動でも‘‘アスカリ‘‘という警備員が付き添う。
と言っても、彼らは銃を持ってるわけではなく、こん棒か竹を1本、持っているだけなので、
見るからに不安なのではあるが、野生のしきたりには詳しいだろうし、
何と言ってもカバと共存してここまで五体満足でやってきているのだから、
頼りになるのだろう。
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「けっして外に出てはいけませんよ、旦那」
とアスカリはまるで‘鶴の恩返し‘みたいなことを言って夕食後コテージまで送ってくれたあと去って行った。
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夜中。
「ボヨン、ボヨン、グフーッ、ボウボウ、グオー」
と不思議な音がしているのに気が付いた。
コテージのすぐそばに何かいる!
書くと不思議な擬音のオンパレードになりそうだから省くが、
やたらと騒がしく、不思議な足音と鳴き声と草をむしり取り食べる音が混じっていて、
最初聞いた時は、恐ろしくてベットから出て、窓に近づくこともできなかった。
これがカバの鳴き声だなんて知る由もなく、あののんびりした姿からこんなけたたましい叫び声なんて想像できない。
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「けっして外に出てはいけませんよ」
と言われたけれど、
うーむ、外へ出たい。
けど怖い。
しかし無性にその姿を見てみたい。
でも怖い。
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ドーン!!
好奇心が勝って外へ出てしまった!
コテージも前にはこんな奴がいた!
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カバは昼間に見るのと、夜に見るのとでは印象が大きく違うことに気が付いた。
昼間のおとなしそうな可愛い表情は無く、
目は狂気が宿っているかのような冷たい光を放っている。
これは怖い!
ライオンより怖い。
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室内にすぐに逃げ込めるようにして写真を撮っていると、
アスカリがやって来た。
「旦那は写真を撮りたいんですね、だったらこっちの方がいいですよ」
と言いながらカバに近づいていく!!!
えっ、危ないんじゃないの?
適度な距離感を保つとカバも反応しないようだ。
しかしアスカリはどんどん近づいていく!
カバがムッとして顔を上げると、
まるでまとわりつくハエでも追い払うようにシッシッと長い竹の棒でを振り回す。
するとカバはうるさそうに向きを変える。
カバの身になれば、こっちから近づいて行ってシッシッもないもんだが、
このオッサンはなかなかの‘‘カバ使い‘‘だわ!!
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彼はレイク・バリンゴの漁師の出らしく、
生まれた時からカバとワニと共存して暮らしてきただけあって、
カバとの阿吽の呼吸を心得ている。
彼の陰に隠れながら、バシバシ写真を撮っていると、
「カバの写真を撮るなら、明日、ボートで湖に出ればいい」
と教えてくれた。
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翌朝。
オイラはボロっちいボート?小舟?の上にいた。
一応は油まみれの船外機が付いていて、
2サイクルオイルの匂いと煙をまき散らしながら湖上を突っ走っている。
そしてカバの群れを見つけるとエンジンを止めてユラリユラリと漂いながらカバたちを観察したり撮影した。
そしてカバが潜ったり、近づきすぎそうになると、エンジンを掛けて位置を修正する。
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「ガソリン一滴は血の一滴」
という事もないだろうが、
船頭は、ほんの一瞬でもエンジンを停めたがる。
近づいてエンジンを止めた瞬間にカバが移動するとまたエンジンを掛けるのである。
カバが動いているのだから、しばらく様子を見ればいいのに、瞬時にエンジン停止。
潜るとどこに出てくるかわからないので気味が悪いのだが、習性を知っているのかお構いなしだ。
確かにカバから船には近づいてこない。
しかしたまにまだ遠いいのに機嫌が悪い奴は水の中からジャンプして、近づくなオーラを全開にする。
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そしてついにその時はやって来た。
カバは縄張り意識強いらしく、群れのボスはよそ者の侵入を嫌って攻撃してくる、らしい。
しかし群れの中のどいつがボスだなんて、さすがの漁師も知らなかったようで、
一頭のカバと距離はあるのに目と目が合った瞬間に、いきなり水の中を小刻みにジャンプしながら動き出した。
どう見てもターゲットはよそ者のカバではなく、オイラ達の小舟だ!!
さすが地元生まれの船頭はいち早くそれに察知し、逃げるために船外機のエンジンを掛ける!
はずがが掛からない!
セルなんて洒落たものはアフリカの田舎の船外機には付いてなくて、
スターターロープをひたすら引っ張る。
引く!
ひたすら引く
カバはグングン近づいてくる!
大きな水しぶきを伴って飛び出るので離れていてもすごい迫力だ!
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船頭が焦っているので、ちゃんとアクセルを開けてないのか、開けすぎなのか、
なかなかエンジンが掛からない。
オイラも焦って、
「アクセル、チョーク」
とか叫んでいるのだが、伝わっているかどうかわからない。
もうだめ!
体当たりされる、と覚悟した時、
ポロポロっとかぶり気味の頼りない音ながらエンジンが始動した!!
逃げろ~!
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イヤー間一髪。
何とか体当たりされずにすんだ!!!
その時の1枚がこれ。
慌ててるからピントも甘いけど、ビデオの最後のシーンと瓜二つでしょ。
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「危なかったな~」
と言いながら船頭は別のカバの群れに近づいて行って、
またエンジンを止めやがった!!!!
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